ムンカルの図
是も初めにしるせしムンカルと同しく、草を
かるといふ事也、されと其義はたかひ有事にて、
前にしるせるは、たゝ草を苅る事をいふ也、こゝに
いふところも蒔置たる二種のものゝ芽を出せし
より、其たけもやゝのひたる頃に及ひ、其間に
野草の交り生して植し物のさハりとなる故に、
其草を抜きすつる事をいふ也、されハ同しく
草を除くといふにも、其わけはたかひてあれ
とも、上に論する如く、夷人の言語は数少く
して物をかねていふ事のあるゆへ、これらの
類もひとしくムンカルとのミ称する也
、
本邦にて禾菜の類を作るにハおろぬくといふ事ありて、蒔たる種の一つに叢生したる
をは其間をすかし、長し易からん事をはかりて
ぬき去る事なとあれと、夷人のするところハ
聊かさよふの事もあらす、唯こゝに図する如く
野草なとのはひこり生する事あれハ、それを
抜き去るのミにて、其余はたゝ生したるまゝにて
打すてをけとも、自然によく生熟する
事なり、
これも、初めに記したムンカルと同様、草を刈るという言葉である。しかし、その意味内容は異なっている。前に記したものは、ただ草を刈ることをいうのみであった。ここでいうムンカルは、蒔いて置いた二種の作物が発芽し、丈もやや伸びた頃に、その間に交じって生えてきて成長の妨げとなる雑草を取り除く作業をいう。従って同じく草を除くという言葉ではあるが、その意味するところは異なっているのである。これは、前述のように、アイヌの人々の言葉は単語の数が少なく、物事を兼ねていうことがあるためである。いま述べた二つの作業について、同じくムンカルと称するのは、そのためである。


































































