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"ヲイ": 6 件ヒット
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第7巻, 5ページ, タイトル: |
| 家を焚焼せる事ハ甚意味のある事にて、委し
くハ葬送の部にミえたり、
居家の製、其かたちのかハりたる事、東地にしてハ南方
シリキシナイの辺より極北クナシリ島に至るまての間、凡
三種あり、其うちすこしつゝハ大小広狭のたかひあれとも、
先つは右三種のかたちをはなれさる也、三種のかたちハ後の
居家全備の図に其地形をあハせて委しく録せり、
但し、居家のかたちハ三種の外に出すといへとも、其製作の
始末は所によりて同しからぬ事も有也、此書に図したる
ところはシリキシナイの辺よりシラヲイ辺まての製作
の始末なり、シラヲイ辺よりクナシリ島に至るまての
製作は、また少しくたかひたるところ有といへとも、図に
わかちてあらハすへき程の事にあらさるゆへ、略して録せす、
たゝ屋を葺にいたりては茅を用るあり、草を用るあり、
あるハ竹の葉を用ひ、あるハ木の皮を用るとふのたかひ有て、
其製一ならす、いつれも後に出せる図を見てしるへし、
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家を燃やすことはとりわけ意味があること
で、そのことは「葬送の部」に詳述してある。>
☆家の造りかた、そのかたちが変化すること、東蝦夷地にあっては南はシリキシナイのあたりから、最も北はクナシリ島に至るまでの間に、おおよそ三種類ある。そのうち、少しづつは大小や広い狭いの違いはあっても、まず大体は右にいう三種類の形から離れることはない。三種のかたちについては後に出す「居家全備の図」に敷地の形をあわせてくわしく記録してある。
<註:ただし、家のかたちは三種類のほかに出しているけれども、その造りかたの始末は場
所によっては同じではないこともある。この本で図示したものはシリキシナイのあた
りからシラヲイあたりまでの製作技法の始末である。シラヲイあたりからクナシリ島
に至るまでの技法は、またちょっと違っているところがあるけれども、図をそれぞれ
区別して示すほどのことでもないので略して記さない。>
ただ、屋根を葺く技法は、茅を使う場合があり、草を使う場合があり、あるいは竹の葉を使い、あるいは木の皮をつかうなどの違いがあって、その製作技法は同一ではない。そのいずれも後出の図をみて理解してほしい。
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第7巻, 29ページ, タイトル: |
| 此図はシリキシナイの辺よりシラヲイの辺に
至るまての居家全備のさまにして、屋は茅を
もて葺さる也、是をキキタイチセと称す、キは
茅をいひ、キタイは屋をいひ、チセは家をいひて、茅の
屋の家といふ事なり、前にしるせし如く、屋をふく
にはさまーーのものあれとも、此辺の居家は専ら
茅と草との二種にかきりて用るなり、チセコツと
いへるは其家をたつる地の形ちをいふ也、チセは家を
いひ、コツは物の蹤跡をいふ、この図をならへ録せる事ハ、
総説にもいへる如く、居屋を製するの形ちはおほ
よそ三種にかきれるゆへ、其三種のさまの見わけやす
からんかためなり、後に図したる二種はミな此故と
しるへし、
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☆ この図はシリキシナイのあたりからシラヲイのあたりまでの家の完備したすがたで、屋根は茅で葺いてある。これをキキタイチセという。キ【キ:ki/カヤ】は茅をいい、キタイ【キタイ:kitay/てっぺん、屋根】は屋根をいい、チセ【チセ:cise/家】は家をいうから茅の屋根の家ということである。前述のように屋根の葺き方にはさまざまなものがあるが、このあたりの家はもっぱら、茅と草の二種だけを使うのである。
チセコツというのは、その家を建てる敷地のかたちをいう。チセは家をいい、コツ【コッ:kot/跡、くぼみ】はものの
あとかたをいう。この敷地の図を並べて記すのは総説でものべておいたように、家を造る際のかたちはだいたい三種類に限られるので、その三種類の形体を見分けやすくしようと考えたためである。後に図示した二種はミナこの理由によるのである。
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第7巻, 32ページ, タイトル: |
| 此図はシラヲイの辺よりヒロウの辺にいたる
まての居家全備のさまにして、屋は蘆をもて
葺たるなり、是をシヤリキキタイチセと称す、シヤリ
キは蘆をいひ、キタイは屋をいひ、チセは家を
いひて、蘆の屋の家といふ事なり、此辺の居家
にては多く屋をふくに蘆のミをもちゆ、下品
の家にてはまれに茅と草とを用る事もある
なり、
右二種の製は四方のかこひを藩籬の如くになし
たるなり、
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☆この図はシラヲイのあたりからヒロウのあたりまでの家の完備したようすで、屋根は芦で葺いている。これをシヤリキキタイチセという。シヤリキ【サ*ラキ:sarki/アシ、ヨシ】は芦のこと、キタイ【キタイ:kitay/てっぺん、屋根】は屋根、チセ【チセ:cise/家】は家をいうから、芦の屋根の家ということである。このあたりの家の多くは屋根を葺くのに芦だけを使う。下品の家ではまれに茅と草とを用いることもある。
右に図示した二種の造りは四方の囲いを垣根のようにしてある。 |
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第8巻, 9ページ, タイトル: |
| 是はウカルを行ふの時、拷掠するに用る杖なり、
シユトと称する事はシモトの転語なるへし、
本邦の語に□笞をしもとゝ訓したり、
これを製するには、いつれの木にても質の堅固
なる木をもて製するなり、其形ちさまーー変り
たるありて、名も又同しからす、後に出せる図を
見てしるへし、此に図したるをルヲイシユト
と称す、ルとは樋をいひ、ヲイは在るをいひて、
樋の在るシユトといふ事也、後に図したる如く
種類多しといへとも、常にはこのルヲイシユト
のミを用ゆる事多し、夷人の俗、此具をことの
外に尊ひて、男の夷人はいつれ壱人に壱本
つゝを貯蔵する事也、人によりてハ壱人にて
三、四本を蔵するもあり、女の夷人なとには
聊にても手をふるゝ事を許さす、かしらの
ところにハルケイナヲを巻て枕の上に懸置也、
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☆ これはウカルをおこなうとき、むち打つのに用いる杖である。シユトという語はシモトの転語であろう。
<註:わが国のことばで楉笞を「しもと」と訓じている>
これを作るには、どんな木でも木質の堅い木を用いる。そのかたち、いろいろ変ったものがあって、名称も同じではない。あとに出した図を見て理解してほしい。
ここに図示したものをルヲイシユト【ruosutuあるいはruunsutu→ruuysutuか?】という。ル【ル:ru/筋】は樋をいい、ヲイ【オ:o/にある。ウン→ウイ?:un→uy?/ある?】は在るということで、樋の在るシユト【ストゥ:sutu/棍棒、制裁棒】ということである。後に図示したように種類は多くあるが、通常はこのルヲイシユトのみを使うことが多い。
アイヌの人びとのならいでは、この道具をことのほか尊んで、男はみなひとり一本づつもっているのである。ひとによっては、ひとりで三、四本をもっているものもあるが、女などにはわずかでも手を触れることを許さない。その頭のところにはハルケイナヲ【ハ*ラキ● イナウ:harki inaw/●】を巻いて、枕の上に掛けておくのである。
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第8巻, 15ページ, タイトル: ケフヲイシユトの図 |
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第8巻, 16ページ, タイトル: |
| ケフヲイシユトといへるは、ケは毛をいひ、フはま
はらなる事をいひ、ヲイは在る事をいひて、
毛のまハらに在るシユトといふ事なり、これは
海獣の皮を細長く切りて図の如くにシユトの
かしらに巻たるゆへ、其毛のまハらに在るを以て
かくはいへるなり、
ここに海獣としるしたるは、奥羽松前とふの
方言にトヾといへるもの也、夷人の言葉に何と
いひしにやわすれたるゆへ、其名をしるさす、追て
録すへし、
右に図したる六種の外にも形ちのかはりたる
シユトさまーーあるよしをいひも伝ふれと、まさし
く見たる事にあらさるゆへしるさす、追て糺尋
のうへ録すへし、
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☆ケフヲイシユトというのは、ケ【ケプ*ル:kepur/毛皮の毛を抜いたもの?】は毛のことをいい、フはまばらなこと、ヲイ【オ:o/にある。ウン→ウイ?:un→uy?/ある?】は在るということで、毛のまばらに在るシユトのことである。これは海獣の皮を細長く切って図のようにシユトの頭に巻いているので、(海獣の皮に)毛がまばらにあるのでこのようにいうのである。
<註:ここに海獣と記したのは、奥羽、松前などの方言にトドというもののことである。アイヌ語でなんというのか忘れたので、その名は記さない。おって記録することにしよう。
右に図示した六種類のほかにもかたちの変ったシユトがいろいろあると伝えているが、確かに見たことがないので記録しない。いずれ聞きただしたうえで記録することにしよう。>
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