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"ウカル": 7 件ヒット
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第1巻, 30ページ, タイトル: |
| シユトといへるは、もと杖の名にして、ウカルを行ふ
時にもちゆる物也、
ウカルといふは、夷人の俗罪を犯したる者あれハ、
それをむちうつ事のある也、シユトは其むち
うつ杖の事をいふ、委しくは、ウカルの部にミえたり、
此イナヲを製するには、まつ木をシユトの形ちの
如くにして、それより次第に削り立る事をなすに
よりて、かくは名つけし也、 本邦の語に
罪人をうつ杖の事をしもとゝいふ、さらはシユトは
しもとの転語にして、これ又 本邦の語に
通するにや、このイナヲはいつれの神を祈るにも
通し用ゆる事也、
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「シユト」とは、もと杖の意味であり、ウカル( )を行なう時に用いられる。
* ウカルといって、アイヌの人々のなかで俗罪を犯した者がいた場合、その者を鞭打つことがある。シユトは、その際に用いられる杖のことをいう。詳しくは、本稿「ウカルの部」に記してある。このイナヲを作製するときに、まず木をシユトの形のように加工してから順次削っていくことにより、こう名づけられたのである。わが国の言葉で罪人を打つ杖のことを「しもと」という。つまり、「シユト」は「しもと」の転語であり、これまたわが国の言葉と通じていることになろう。なお、このイナヲはどの神を祈るにも共通して用いられるものである。
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第8巻, 1ページ, タイトル: 蝦夷生計図説 ウカル之部 八 大尾 |
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第8巻, 3ページ, タイトル: ウカルの図 |
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第8巻, 4ページ, タイトル: |
| 夷人のうち悪事をなす者あれハ、其所の夷人
ならひに親族のもの集りて、図の如くに其者を
拷掠し、罪を督す事也、是をウカルといふ、此語の
解未さたかならすといへとも、夷語に戦の事をも
ウカルといふ事あり、
戦の事をイトミともいひ、またウカルとも
いふ也、夷人の戦といへる事ハ、意味殊に深き事にて、
委しくハ戦の部にみえたり、
これハ 本邦辺鄙の人の言葉に、人を強く
うち倒す事をウチカスムルといふ事あり、戦は
いつれ人をうち倒すをもて事とするゆへ、此
言葉を略してウカルとはいふなるへし、さらは
此処にて人の罪あるを督すも、又拷掠するを
以てのゆへに同しくウカルとハ称するにや、
ここにウカルのさまを図したる事ハ、夷人に
望て其行ふさまをなさしめて其侭を図し
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☆ アイヌのなかで悪事をはたらくものがあれば、そのところのアイヌの人びとやかれの親族のものが集まって、図のようにかれをむち打って罪を責めとがめることがある。これをウカル【ウカ*ラ?:ukar?】というが、このことばの意味はまだよくわからないけれども、アイヌ語にいくさのことをウカルということがある。
<註:いくさのことはイトミ【イトゥミ:itumi/戦争】ともいい、またウカルともいうのである。アイヌの人びとの
いくさというのは、その意味にことさら深いものがあるが、詳しくは「いくさの部」
に述べてある>
これはわが国の辺鄙な土地に住んでいる人びとのことばに、人を強く打ち倒すことをウチカスムルということがある。いくさはどのみち人を打ち倒すことが目的なので、このことばを略してウカルというのであろう。そうであるならばこのところで人の罪をただすのも、また、むち打って罪を責めとがめるということであるからおなじくウカルというのではなかろうか。
<註:ここにウカルのようすを図示したのは、アイヌの人びと頼んでそれを行なうようす
をしてもらってそのままを描い
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第8巻, 5ページ, タイトル: |
| たる也、是を行ふ事、たゝに刑罰の事のミとも
きこえす、時によりてハ其者を戒め慎ましめんか
ために行ふ事もありとミゆる也、後にしるせる
六種の法を見て知へし、
これを行ふの法、すへて六つあり、其一つは前に
いふ如く、悪行をなしたるものを打て其罪を督す也、
二つにハ夷人の法に、喧嘩争闘の事あれハ、負たる
者のかたよりあやまりの証として宝器を出す也、
是をツクノイと称す、
此宝器といへるは種類甚多して事長き故に、
こゝにしるさす、委しくハ宝器の部に見へたり、
其ツクノイを出すへき時にあたりて、ウカルの法を
行ひ拷掠する事あれハ、宝器を出すに及ハすして
其罪を免す事也、三つには人の変死する事有
とき、其子たる者に行ふ事あり、是ハ非業の死なる
ゆへ其家の凶事なりとて、其子を拷掠して恐懽
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たものである。これを行なうことはただ刑罰のため
だけとも解釈できない。時によってはその者を戒めてつつしませるために行なうこ
ともあるらしい。後述する六種の法を見て考えてほしい>
ウカルを行なうしきたりにはみんなで六種類ある。
そのひとつは前述のように、悪いことをしたものを打ってその罪をただすことである。ふたつめはアイヌの人びとのおきてに、けんかや争い事があれば、負けた方からお詫びのしるしとして宝物を差し出すことがある。これをツグノイ【トゥクナイ?:tukunay?/償い】という。
<註:この宝物というのは種類がとても多く、説明すると長くなるのでここには述べな
い。詳しくは「宝器の部」に記してあるので参照されよ。>
そのツグノイを差し出すに際して、ウカルを行なってむち打たれることがあれば、宝物を差し出す必要はなくして、その罪が許されるのである。みっつめは、人が変死したときにその子に行なうことがある。変死というのは非業の死なので、その家の凶事であるから、その子をむち打って怖れ
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第8巻, 6ページ, タイトル: |
| 戒慎せしめ、子孫の繁栄を祈る心なり、又其子
たる者親の非業の死をかなしミ憂苦甚しく、ほとんと
生をも滅せん事をおそれ、拷掠して其心気を励し
起さんかために行ふ事も有よし也、四つにハ父母の
死にあふ者に行ふ事有、是ハ其子たるものを強く
戒しめて父母存在せる時のことくに万の事をつゝしミ、
能家をさめしめん事を思ひて也、五つにハ流行の
病とふある時、其病の来れる方に草にて偶人を作り
立置て、其所の夷人のうち一人にウカルの法を行ひ
て、その病を祓ふ事有、六つにハ日を連て烈風暴雨等ある
とき、天気の晴和を祈て行ふ事有、此流行の
病を祓ふと天気の晴和をいのるの二つは、同しく拷掠
するといへとも、シユトに白木綿なとを巻て身の痛まさる
よふに軽く打事也、此ウカルの外に悪事をなしたる
者あれハ、それを罰するの法三つ有、一つにはイトラスケ、
二つにはサイモン、三つにはツクノイ也、イトラスケといふは、
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慎ませて子孫の繁栄を祈るこころなのである。また、その子は親の非業の死を悲しみうれうることがはなはだしく、ほとんど命を失わんばかりになることを心配して、むち打つことでかれの気持ちを奮い起こすために行なうこともあるという。
よっつめは父母の死にあったものに行なうことがある。これはその子どもを強く戒めて両親が生きていたときのように万事を慎んで、うまく家を守るようにと願ってのことである。いつつめは、伝染病が流行したときなど、伝染病が来る方向に草で作った人形を立ておいて、その村の住人のひとりにウカルを行なって、病気のお祓いをするのである。むっつめは連日、暴風雨が吹き荒れたとき、天候の回復を祈って行なうことがある。
この伝染病のお払いと、天気の回復を祈ることのふたつは、おなじむち打つといっても、シユト【ストゥ:sutu/棍棒、制裁棒】に白木綿などを巻いてからだが痛まないように軽く打つのである。
ウカルのほかに、悪いことをしたものがあれば、かれを罰する方法にみっつある。
ひとつはイトラスケ、二はサイモン【サイモン:saymon/神判、盟神探湯】、三はツクノイである。イトラスケというのは、
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第8巻, 9ページ, タイトル: |
| 是はウカルを行ふの時、拷掠するに用る杖なり、
シユトと称する事はシモトの転語なるへし、
本邦の語に□笞をしもとゝ訓したり、
これを製するには、いつれの木にても質の堅固
なる木をもて製するなり、其形ちさまーー変り
たるありて、名も又同しからす、後に出せる図を
見てしるへし、此に図したるをルヲイシユト
と称す、ルとは樋をいひ、ヲイは在るをいひて、
樋の在るシユトといふ事也、後に図したる如く
種類多しといへとも、常にはこのルヲイシユト
のミを用ゆる事多し、夷人の俗、此具をことの
外に尊ひて、男の夷人はいつれ壱人に壱本
つゝを貯蔵する事也、人によりてハ壱人にて
三、四本を蔵するもあり、女の夷人なとには
聊にても手をふるゝ事を許さす、かしらの
ところにハルケイナヲを巻て枕の上に懸置也、
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☆ これはウカルをおこなうとき、むち打つのに用いる杖である。シユトという語はシモトの転語であろう。
<註:わが国のことばで楉笞を「しもと」と訓じている>
これを作るには、どんな木でも木質の堅い木を用いる。そのかたち、いろいろ変ったものがあって、名称も同じではない。あとに出した図を見て理解してほしい。
ここに図示したものをルヲイシユト【ruosutuあるいはruunsutu→ruuysutuか?】という。ル【ル:ru/筋】は樋をいい、ヲイ【オ:o/にある。ウン→ウイ?:un→uy?/ある?】は在るということで、樋の在るシユト【ストゥ:sutu/棍棒、制裁棒】ということである。後に図示したように種類は多くあるが、通常はこのルヲイシユトのみを使うことが多い。
アイヌの人びとのならいでは、この道具をことのほか尊んで、男はみなひとり一本づつもっているのである。ひとによっては、ひとりで三、四本をもっているものもあるが、女などにはわずかでも手を触れることを許さない。その頭のところにはハルケイナヲ【ハ*ラキ● イナウ:harki inaw/●】を巻いて、枕の上に掛けておくのである。
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