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"イヨツ": 2 件ヒット
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第5巻, 38ページ, タイトル: |
| 用ひしより、終に其法をは失ひし成へし、
今奥羽の両国松前とふにてハ、なを其法を
伝へて猟舩にはことーーく敷に右のイタシヤキ
チプを用ゆ、是をムダマと称す、ムタマはムタナの
転語にして、とりもなをさす棚板なき舟といふ心也
、
其敷に左右の板をつけ、夷人の舟と
ひとしく仕立たるをモチフと称す、モチフは
モウイヨツプの略にして、舟の事也、凡そ夷地
にしては舟の事をチプといふ事よのつねな
れとも、その実はモウイヨツプといへるが舟の
実称にして、チブといへるは略していふの詞なる
よし、老人の夷はいひ伝ふる事也、モウは乗る
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用いてから、ついに「無棚小舟」の製法は伝承されなくなったのである。今、奥羽の両国と松前などでは、まだその方法を伝えていて、漁船にはことごとく船体に右のイタシヤキチプを用いていて、これをムダマと称している。ムダマはムタナの転語であって、とりもなおさず「棚板なき舟」という意味である。
船体に左右の板をつけ、アイヌの人びとの舟と同様に作ったものをモチフという。モチフは「モウイヨツプ」の略語であって舟のことである。そもそも蝦夷地においては舟のことをチプということがあたりまえであるけれども、その実は「モウイヨツプ」というのが舟の実称であって、チプというのは略していうことばであるとは、老人のアイヌのいい伝えることである。モウは乗る
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第7巻, 41ページ, タイトル: |
| プは夷人の物を入れ置ところにして、
本邦にいはゝ蔵の如きもの也、プといへるはもと器の
事にもいへり、たとへは矢を入る筒をアイイヨツプ
といふか如し、アイは矢をいひ、イヨツは入るをいひ、プは
器をいひて、矢を入る器といふ事也、又物といふ事にもきこ
ゆるにや、アイイヨツプといふを矢を入る物とも解すへし、然れ
とも物といふ語は別にベといふ事ある時は、いつれ器と
解するを得たりとす、しかれハ何のプ某のプといふときは
器の事になり、たゝプと計りいふときは蔵の事になる也、これは
蔵といへるも、もと物を入れをくところゆへ同しく
器の類といふ心にてかくいふと見ゆるなり、
プといへるの解は、委しく語解の部にミえたり、
すへて此等の事、夷人の境言語のかすすくなく
して、物をかねていふゆへなり、
言語のかす少して、言は一つにて物をかねていふ
といへる事は、アユシアマヽの部に委しくミえたり、
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☆プ【プ:pu/倉】はアイヌの人びとが物を入れておくところで、わが国でいう蔵のようなものである。プというのはもと器のことにもいう。たとえば、矢筒をアイイヨツプというように、アイ【アイ:ay/矢】は矢、イヨツ【オ:o/に入っている】は入れるをいい、プ【*プ:p/もの】は器をいって、矢を入れる器ということである。また、プは物ということという意味があるのかもしれない。アイイイヨツプを矢を入れる物とも解釈できる。しかしながら、物という語はほかにベ【ペ:pe/もの】という語もあり、どのみち器という意味に解釈することができる。だから、「何のプ」「だれそれのプ」というときは器のことになり、ただ、プとだけいうときは蔵のことになるのである。これは蔵といえども、もともと物を入れておくところなのでおなじく器のたぐいという意味あいがあってこのようにいうのであろう。
<註:プの解釈は、詳しくは「語解の部」にある。>
【●校訂者註:厳密に言うと、プpuと*プpは別の単語である。また、「もの」という意味の*プpとペpeは、直前の音が母音の場合は*プp、子音の場合はペpeのかたちをとる】
総じて、これらのようなことおこるのは、アイヌの人びとの国では語彙のかずが少ないので物を兼ねていうからである。
<註:語彙数が少ないのでことばひとつでいくつかの物をかねていうことは「アユシア
マヽの部」に詳しい。>
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